中卒日記

中学の同級生よりも早く社会に出ていた僕には、年上の友人が多かった。トラックの運転手をやってる18歳のおネエさん、土木の設計をしていたオニイさん。皆、良いヒトだった。僕のことを可愛がって、色々な所に連れて行ってくれたし、夜遊びにも誘ってくれた。
当時僕が好きだった女の子がいた。その子の事を何でもかんでも、そのオニイさんに相談していた。電話で、こんな事喋ったんだよ、ローソンの前で何時間も立ち話したんだ♪。等々、とにかく浮ついている、しかし憎らしいくらい無邪気な16歳の心をそのままぶつけていたのだ。
そんなある日、そのオニイさんの事も知っている共通の知人からこんな話を聞いた。
「コウジ君とマサミちゃんの事、オニイさんが皆に、言いふらしてるよ。」
頭にかすかな閃光が走り、16歳の繊細すぎる心に強烈なストロボを浴びせた。が、ストロボの光が消えるか消えないかのうちに、平常心を取り戻した僕はいつもの半笑いで、知人との会話を続けた。
言ったかどうか、という事実はどうでも良い。そこで、裏切られたかもしれないと疑ってしまい、頭に閃光が走る僕の繊細な心が呪わしかった。
そんな、16歳の思い出。
人と人の繋がりって、もろい。故に愛しい。