夜10時36分
駅からの帰り道。
肌にまとわりつく湿っぽい風を、自転車でひとこぎひとこぎ掻き分けていると、薄暗い電灯の下にいまどきのバイクが一台止まっている。
昼間は交通量の多いその場所で、バイクの陰に、男の子と女の子の人影が蒸し暑いアスファルトに腰掛けている。
何を話しているのか、二人の今後か、くだらない何かなのか。
しかし、道路に立ち止まって道を確かめているように見えた。
いつから立ち止まらなくなったんだろう。
あんなに無駄に道に迷ったのに。
これから迷って立ち止まってはいけないのだろうか。
思いっきり前に進むためには、立ち止まらなくてはいけない時があると思う。
道を見極めるために。
その"時"は、自分が決めるもの。