残虐記
桐野 夏生
新潮社
売り上げランキング: 165224
新潮社
売り上げランキング: 165224
リアル。
またもリアル。
事件被害者の心象を慮る。
こんなの戯言ですね。
僕の心の中を客観的に照らされている気がしました。
義手、聾、犯罪被害者。
この共通点は自分自身との対話の量、しかもその圧倒的な量でしょう。
自分も及びはつかないまでも、相当多いと自負しています。
自分の心象をどれほど精緻に捉えるか、この精度が格段に違うのだと思います。
自分が自分をごまかそうとする機微までしっかりと捉える。
これはとても辛く、面倒くさい作業です。
しかし、周囲の環境に何らかの欠損を感じている人は、嫌でも自分自身との対話を余儀なくされる。
なぜなら、周囲と同じ環境に身を置くことで自分の思考を一般化できないから。
ほとんどの人は心象の相当の割合を、常識や一般という基準として社会と共有でき、辛く面倒くさい自己との対話を、一般化して済ませられるからです。
この過程を、一般の人は相当成熟してから(壮年、中年になってから)経験するのではないでしょうか。
しかし、なんらかのハンディキャップを若くして背負った人は、相当早い段階でこの過程を踏む。
んー、だからどうしたの?と聞かれれば、
「別に・・・。」
と答えるしかない。
でも、自分は前者の気が大分強いと思ったのです。